海は広いな 大きいな月は昇るし 日は沈む[先刻から男はデッキにいた。「海」といえば大半が思いつくであろう歌を口遊みながら、残ったパンを千切ると鴎の飛ぶ方向へ投げつける。―――あと二時間もすれば、上陸か。【入島に関する事前承諾書に署名をした】事がとても昔の事の様だ。]ご清聴ありがとう。[ガアー、ガアアーという鳥の声を聴けば、そちらへ会釈をした。気圧の変化に体調は思わしくないがこれも、まあ慣れるか。]