[教官と厩務員と少しの間交渉して借り受けた馬は
高齢のため4年前に乗馬を引退して、
今は静かに余生を送っているエーデルヴァイス号。
現役時代、彼女は主に新入生をその背に乗せていた。
夜の空のような漆黒の馬体をもつ、
もの静かなお嬢さんも魅力的ではあるのだけれど。
馬に馴れない初心者でも乗せられるような、
気性が優しくて、歩いた時の振動も少ない彼女ならば、
怪我人が乗っても苦にならないのでは、と思ったのだ。
久しぶりに再会した芦毛の彼女。
当時灰色だった馬体は年齢のためすっかり白一色に代わり
エーデルヴァイス《気高い白》という名が相応しいものになっていた]