― 3階への階段踊り場 ―
[突如大きな音がなったかと思えば、階段の一部が崩落する。
土煙の中現れたのは、全身血まみれの男の姿だった。
到着と同時に翼は霧散し、弱々しい気配だけが残る。]
……嗚呼、やはりここですね。
[ジークムントとバルコニーへ向かった男>>87――そして、野茨公が腕に収めた少年>>88。
一人確信に至れば、掌で握り締めていた血玉のペンダントを離した。
胸元で揺れるそれは、深く暗い色を宿して、ただ静かに揺らめいている。]
か……は、ぁ。
[血反吐を床に零せば、また淡い花が咲く。
三人のことを気にする素振りも見せず、野茨公の亡骸を、灰の欠片たちを、夜の湖面に似た黒い瞳が探し始めた。]