[食事を終えた…のテーブルに、香り高い紅茶とフルーツのタルトが届けられる。上目遣いに…を見つめるラヴィの視線に、…はため息をつく。]
一口だけですよ、甘いものを食べ過ぎると太って走れなくなって、狼に捕まってしまいますからね。
[からかうように、ちょっと脅すような素振りを見せつつ、…はタルトを小さくカットし、ラヴィの前の取皿に置いた。残りのタルトを紅茶とともにゆっくり楽しむ…の視界に、見覚えのある茶色の長髪が飛び込んできた。思わず…は声を上げる。]
ディーク殿!暫く姿を見ないと思っていたら、今度は何方に出かけていたのですか!シメオン殿も随分と心配していたのですよ!
[…は腐れ縁の幼馴染が、賭場で大金をすってきたことを悪びれもなく話す様子にやれやれといった表情を浮かべたが、『王都』という単語が出た瞬間、僅かに顔を強張らせた。しかしすぐにその強張りは溶け、目の前の友人に微笑みを向ける。]
全く、向こう見ずで場当たり的なその性格は、子どもの頃から変わりませんね…。ローゼンハイム殿の温室の硝子を割ったときも、「宇宙人が飛び込んできたんだ!」なんて言って、更に怒られていたじゃないですか。一緒にいた私とシメオン殿まで長々と説教を喰らったの、忘れたとは言わせませんよ…。
とりあえず、シメオン殿が随分心配していたので、後で必ず顔を見せてあげていただけますね?約束ですよ!