―― 銀羊号 メイン・サロン ――
ははは、くっそー、死ぬかと思った。
これ、あれだな、新型の兵器として使える勢いだね。
[むしろ旧型だろう。
炭酸の洗礼を見事に浴びて、もんどりうって椅子から落ちて、洗面所に駆け込んだのが数分前のこと。
ぐしゃぐしゃに濡れた上着をぐしゃりと小脇に抱え、鼻には詰め物。
勤務熱心な上官や同僚に見咎められたら以下略の状態で席に戻り、食事を再開する。
もう殆ど食べてしまっていたから、食べ終わるまでは早かった。
化学調味料増し増しのスープの最後の一滴まで大事に頂いてから、ごみを片付けて席を立つ。]
――っと。
[ついでにポケットから錠剤を取り出して包装をあけ、ざらざらと口に放り込む。
ジュースが残っていたなら流し込んだところだけれど、まあ、水なしで飲むのも慣れているから差し支えない。
さあて、展望室から星を見ようか、それともどこか散歩にでも。
とりあえずはと席を立って歩き出したところで、道なりのカフェ・スペースから甘い香りが漂ってきた。
甘味と茶の店だろうか、かわいらし気な装飾が施され、女性客で賑わっている。
ふ、と笑みがこぼれたのは、自分が食べたかったからというわけではなくて、
何とはなしに脳裏を過る顔があったから。]