ー村郊外ー[木製の車輪が岩肌に乗り上げる。荷台が揺れた拍子に、側頭部をしこたま打ち付けた。目的の村の近くを通るから、と乗せてもらった荷馬車だ。文句は言えまい。ジンジンと痛む頭を抑えながら、猫のように丸めていた上体を起こす。すん、と鼻を鳴した。渓谷が近いせいか湿った匂いの空気を嗅いだ。地鳴りにも似た荷車の振動が身体の芯を震わせる。これは、鳥と、鱗と……屍の匂い。小気味良く鳴った、これは、何かの骨が折れる音。首をきょとりと回す。] リヒャルト。