姉さんは……
[暫し姉の顔を見つめる。
戦地のなかでの死というのに、まるで眠っているかのようだ。
その表情は美しくて、儚い。
抱き寄せていた姉の身体をそっと甲板へと置き、雨に濡れぬよう、上着を被せてやった。]
僕は……
姉さんを、家に連れて帰りたいよ。
[本当は帝国側の交渉が必要なのかもしれないが。
ウェルシュは自分の願いを端的に、そう伝える。]
――――……っ、
[立ち上がろうとしたとき、軽く眩暈が起き、脇腹が痛む。
思わずヴィクトリアに寄り掛かろうとしたが、両脚でふんばり、己が力のみで立ち、歩く。
もし彼女が心配そうな顔をしたらならば、大丈夫、と一言頷いただろう。]