―回想・約十年前C―
[その日の空は牢獄のような雨雲に閉ざされて、日差しは完全に遮られ、暖気が悉く食い尽くされていた。
吹き荒ぶ風は悲鳴を上げるかのように跳ね回り、木々へと襲いかかっているかのようだった。空間そのものが、酷く暴力的なもののように感じたのを、今でも脳裏に焼き付いているかのように、鮮明に覚えている。]
ん、塞がるまで、あと二日三日ってところかな。
[それは誰に頼まれてか外界と村とをつなぐ道を確認しに行ったときのこと。
異変に気が付いたのは、確認事項を確認し終えて店へ戻ろうとしたとき、この日が、“彼女”と出会った日とやけに似ているということに、気が付いたときのことだった。]
あれは……。
[自分と同じくらいの年齢の女性が――凡そ一年と半年前に姿を消した“彼女”が――倒れていた。]