― 回想 ―
[月が浮かぶ湖の畔の草原に倒れていたニコラスは、偶々近くを通りかかった猟師に保護された。
猟師の家で、草原で見た幻と、幻聴のことを話すと、]
「ああ、”出た”のか。
あの湖には”出る”って噂があるんだよ。
あんたみたいに命を助けられた人が何人もいる。
――だがな、助けてくれるのは1度だけなんだ。
2度出会ったら魂を取られちまうって話だ。
あんた、もうあそこには近寄らんほうがいい。」
[それきり、猟師は黙り込んでしまった。
”2度出会ったら魂を取られる”
そう言われたが、ニコラスは「確かめたい!」という好奇心に勝てなかった。
その土地に滞在し、幾度となく湖に足を運んだが、
湖はいつも鏡のように周囲の景色を映すばかりで
結局何も起こらなかった。]