――廊下――
[何も知らぬ、とカシムは言う。>>86
彼の表情からそれが嘘だろうとは察したが、カシムがそう主張したいのならば、カスパルにとっても好都合なのでこれ以上問い詰めるつもりはなかった。]
時間をとらせて悪かった。協力感謝する。
戸締りには気を付けるように。
[そう述べて立ち去ろうとしたところで、サシャについて問われる。>>87
どう答えるかしばし考えてから、苦く笑いカシムの頭を撫でる。]
……君が気にすることではない。
寝ていたのなら――関係のないことなのだから。
[関わりたくないのなら、そのまま関わらないで欲しい。
サシャが犯人であった場合、同室者であるカシムが共犯や意図的に見逃していた可能性も指摘されており、彼自身への尋問の必要性も問われていたが、「寝ていた」ならそれ以上は不要だ。
カシムのもとから立ち去りつつ、隣を歩く部下へ目配せをすれば、心得たといわんばかりに頷いてくる。
彼の証言は、正式なものとして記されることだろう。*]