[風呂に行きたいと言うが、レトがそちらに行く気配はなく、
むしろ近づかれ、問いかけられた。>>74]
痛みは、ないな。
[嘘ではない。
先程鋭い痛みを手のひらに感じたはずなのに、既に痛みは遠い。
もう一つ問いに、どう答えようか惑ううちに、レトは目の前に来ていた。>>80
雷に照らされてみえるのは細い指先の先にある鋭利な爪、開かれた口から覗く人では決してあり得ない牙。
それを正しく認識していたが避ける気はあまり起きなかった。イドが、目の前の彼が、子供の来訪を知らせるまでは。
その声に弾かれたように後ろを向く。
その際、爪や牙が頬を、頸を引っ掻いただろうか?]