『ああ、気づいたか。 ……久しぶり……って言ってもわかんねぇよな。 ―――はじめまして?』[羽音の主は、カウンターの上へと着地する。 それは、褐色の蟷螂。 右の鎌で、まるで人間がするようにわしゃりと後頭部を掻いた。]……疲れてるのかな。『あー……いや、違うって。 はいはい、まぁいいや、そのままで聞いてくれ。 ……あんたさ、忘れちまってること、あるだろ? それを、思い出したくないか?』