─ 月の舞台 出立前 ─
[ヴィンセントの教え通り、石を身に宿す儀式を終えて。
互いに伴った痛み、消耗も充分な休息で解消できれば、そろそろ舞台から降りる頃合いとなろうか。
個別領域から出る間際、流石に花嫁衣裳のままではと竜が変じたのは和装とも洋装ともつかぬもの。
膝丈まで短く変わったドレスは、タイトなデザインはそのままに首元まで包むような立て襟と右衽の合わせのワンピースに。
腰元辺りから入る深い切れ込みの隙間から見える脚は、深紅に染まった細身の七分丈のパンツと足首から編上げた麻靴に包ませて。
両肩から垂れ下がっていた布は、ふわりとしたショールへと変じて剥き出しの腕を隠す羽衣のように。
そして、顔を覆っていたヴェールは編み上げた髪を纏め結わえるスカーフと、竜にとって手に馴染む形の、翠から紅へ流れる色彩の扇へと。
男の染め上げた色合いを残したままに、竜の好きに選んだ身拵えは男の眼鏡には叶ったろうかはひとまずさて置き。
今までと同じように、男のエスコートで月の舞台へと今再び立ち戻れば、此度の舞台を共にした同士とも再度まみえて]