[ トールの揮った刃が切り裂いたのは、避け切れぬと見て、咄嗟に公子が翳した左腕。
肘の少し手先に近い辺りがざっくりと斬られて、忽ち腕全体が朱に染まっていく ]
...っ...トー、ル!
[ その血の色にか、或いは公子の上げた苦鳴が聞こえでもしたか、狂熱に浮かされたようなトールの表情が冷水を浴びせられたかの色に瞬時に変わる>>55
だが、男の表情と気配は未だ不安定で ]
この、馬鹿もの...がっ!
[ 再び斬られるという怖れも見せず、公子は一息に立ち竦んだトールとの間合いを詰め、氷の剣を彼の頭に向かって突き入れる ]