― 第二王子自室 ―
[落ち着いてからで構わない、と使いの者には言付けた。
だからどれほど経ってからのことだったろう、彼と言葉交わしたのは。
城門前に押し寄せた800の兵、それに僅か50ばかりの手勢で対してみせた監査局長の度胸と手腕を称える声は大きい。中でも、文官らは一様に彼を称した。
或いは煙たげに眉潜めた者もあったやも知れないが、それはそれ。今はそうした声は埋もれ小さい。
城門前に押し寄せた軍勢を追い払った監査局長、そして身をもって第二王子を守りおおせた尚書官長補佐、この二人を称える声は王宮内の、殊のほか文官らの中に大きかった。それは彼ら自身の不安を打ち消そうとするかの如く、殊更に取り上げられるようでもあった。]