[青い髪を梳いていた手を、
首筋から背中へ、その翼へと滑らせる]
……なぁ。
今のあんたは、もう天使ではない。
神の手足でもなければ、
地上へ遣わされた代行者でもない。
背に少し変わった色の羽を持った
ただの、とても愛らしい女の子だ。
逆に言えば、何者でもなくなったあんたは、
あんたの望むものになれる。
生贄の羊の死を嘆くことも、
道端に咲く花を慈しむことだって
あんたが望むのなら叶えられるんだぜ。
[まるで、誘惑の蛇にでもなったような心地だ。
彼女の翼を慈しむように撫で、
魂を搦め捕るための言葉を紡ぎながらそんなことを考える]