――花屋Florence前にて――
[どうして話しかけたのかは自分でもわからない。
それを店の前でぼんやり佇んでいたことへの気まずさを繕うため、と結論づけることにして。
そして、間。
…え?と内心苦笑い。どうして間が開いているのか、女にはわからず。
どうしたらいいのかわからず一瞬固まる。
と、女性が突如地面に膝をつく。
そのまま綺麗に頭を下げた。]
え。
[声をかけて、直後地面に膝をつかれたのは初めてで、状況が呑み込めずに困惑が広がる。
思わず、表情はそのままに、驚きの声を上げていた。
―――奴隷。それは女にとって概念上のものでしかなく。もちろんその可能性に思い当たるはずもない。
しかしこれはどういう状況だろうか。
メカニックとはいえ、乗員が乗客を正座させている。…あまり人に見られて良い状況でないような気がした。
特に他の乗員にでも見られたら面倒くさいことになりそうである。
困ったように首を傾げて、なるべく顔が近くあるようにしゃがんで、
女性に再び声をかける。]