― いつか・ベルサリス学館にて ―
はぁ、馬鹿は嫌いです。
[幾らかの学術書を抱えながら、職員室の椅子にアレクシスは座った。まだ20代だと言うのに、首を回し、肩に手を当てる姿は幾分老けてみえる。或いは、その物腰の柔和さが余計に、年寄り臭く映ってしまうのかもしれませんが。
そんな風にアレクシスが、嘆息を吐いていると、隣に大きな影が降りる。]
おや、マーティン。貴方も授業終わりです?
お疲れ様です。何か飲みますか?
[幾分砕けた様子で話しかけるのは、彼と比較的長い付き合いというのもあるかもしれないが。何より、彼の快活な性格が、そうさせているのだろう。元軍人と言う事もあり、見た目も相まって威圧感は覚えるが。実際話してみると、存外付き合い易い印象を覚えたものだった。]
ところで聞きました?
こんな時期に一人、転入生が来たそうですね。
ジェフロイ学館長の遠縁の娘だとか。
クロード君辺りに任せておけば宜しいですか。
[そんな日常会話をだらだらとしながら、ひとつ欠伸をする。]