ほんとうに、見かけによらない素早さですわ。
これが、野生の力というものかしら?
それとも…火事場の馬鹿力?
[枝の上から飛び降りて、地面で幾度か転がって、──いやだ。服が汚れてしまいましたわ。
髪の毛を押さえ、コートの土を払い、スカートの裾を軽く整えながら立ち上がるまでを流れるような一連の動きで行ったあと、わたくしは首元のチョーカーに指を掛けましたの。
するり、と滑らかにほどけるそれは、わたくしの手の中で一本の黒い鞭へ、ちょうど腕の長さほどの硬く細い一本鞭に変わります。]
お仕置きをされるのはあなたの方、
───いいえ。これはもうお仕置きではないですわね。
正直に申し上げますと、わたくし、あなたを森のクマさん風情と見くびっておりましたの。
ですが、あらためなくてはなりませんね。