『ジークムント』
[主君しか使わぬ個体名で呼ばれ、氷精霊は顔を上げる]
『約束通り、お前に氷華の名と、氷神としての神格を譲り渡そう』
……――は。
[言葉受け、精霊は了承の返と共に頭を垂れる。
しかし声を発するまでの一瞬の間に、僅かに眉根寄せ表情を険しくしたを、女帝は見逃さなかった]
『我が行いに、不服でもあったかね?』
[す、と玉座より立ち上がった女帝は、頭垂れたままの精霊へ歩み寄り見下ろした]
『なに、力を譲り渡す気は変わらぬが、何も在り方まで私を真似よとは言わぬよ。
乱心した王の名など捨て、気儘に生きてみるも良かろう』