―回想 5年前 クララの実家にて―
[夜盗仲間との誓いの言葉を、今日も復唱する。
『財産は奪っても、希望は消させない。財産は奪っても、命は奪わない』
そう言って、情報屋の情報を元に、クララの実家に侵入した。
全員寝入っていると思っていたが、ここでひとつの誤算。
可能な限り音を立てずにいたのに、家の少女が起きてしまったのである。
ある程度物色したところで気づく。気づかれている。
……精一杯、声音を低くして、鋭く、彼女に告げた]
大人しくしてな、嬢ちゃん。……大人しくしててくれりゃ、傷つけねえ。
[言葉が通じたのか。あるいは相手が萎縮したのかは解らないが。
少なくともその日、クララが叫ぶことはなく、無事に逃げおおせた。
物色を途中で中断したこともあり、期待したほどの成果はなかったが。
傷つけずに済み、助かったという思いは少なからずあった]