[ダークブラウンのショートブーツから、すっと伸びる肌色に卑しきクマ風情の目が釘付けになってしまうのは仕方のないことですけれど、ああ。徒花のように開いた黒い傘の向こう、突き抜けたナイフの手ごたえが、たとえこの手を離れていても響いてきますわ。肉を裂く、その、感触。>>32]
ああ…素敵。
私が毎晩手入れを欠かさない可愛いナイフたちが、今、あなたの血を啜っているのね……
[なんて少し───ほんの少しよ? 幸せに浸っていたら、気が付けばあのクマがわたくしの下で閉じた傘を握っていましたの。
確かに、手傷は追わせましたのに、あんなに、素早い動きで、わたくしめがけて───]
ああっ!
[枝から飛んで避けようとしたわたくしの左のふくらはぎの下を、冷たい感触が通り抜けていきましたの。
とても鋭い、磨きあげられた傘の先端…。>>33
シルクのタイツも、わたくしの肌も裂いて、赤い色がぱっと飛び散るのを感じましたわ。]