― 回想 ―
[ニコラスが家を出て放浪の旅を始めたのは、約10年前――彼がまだ10代の頃――。
繰り返される日々、何不自由のない暮らし。
生活には刺激がなかった。
安心して眠れる家も、あたたかい食事も、気の置けない仲間も、
生きていくのに必要なものは揃っていたけど、それだけでは満ち足りない何かを感じていた。
僕はこの世界について何も知らない。
世の中には僕の知らない世界が沢山ある。
もっと刺激的で楽しいことがあるのではないか。
この世に生まれて、なんとなく生きて、
ただ死ぬだけの人生は嫌だ。
もっと『生きている』実感がほしい。
両親にこの想いを打ち明けると、考古学者であり、冒険家をしている父は理解してくれ、母は「おとうさんの血かしらね…」と溜息を付きながらも”かわいい子には旅をさせろ”という考えの元、ニコラスの生き方を応援してくれた。]