―回想―
[>>31顔は見知っていたが、彼と直接言葉を交わすのはこれが初めてだった。
対応は冷たいもの。
――前村長夫人の同類か。
男は表情には出さずに落胆する。
そういえば、彼は中央からこの村へ流された部類だったか。
大臣を務めた事がある貴族が何やらやらかして…という話は彼がこの村に来た時に流れた。
田舎の伝達網は密で、伝わるのも早い。
何にせよ、こういう時には下手に口答えしない方が良い。
クロイツへの怒号は聞こえていた。]
…はい、分かりました。
[男は首肯すると奥へと向かう彼を通した。
後を追う事はない。
自分は彼の部下ではないのだから。*]