……どういたしまして。
[一瞬幼馴染から視線を逸らして、あらぬ方向へ顔を向けていたから、歪みそうになった顔>>81は見落とした。
尤も目撃しても、何と声をかけたらいいか迷った結果、沈黙を選んだだろうけど。フリーデルにはしっかりしなくていいと言えても、自分と同じく精一杯気を張っているだろうジムゾンの心を、どうほぐしたらよいのか。全然思いつけないのだ。
男とてレジーナとの思い出はある。
小麦粉を届けるたびに対応する顔と声が浮かんだ。昨日だけでなく、未来永劫変わらぬ毎日が来ると信じていたように、宿屋に行けば女主人に必ず会えると考えていたのに。
どうして、どうしてと答えのない問いを繰り返していると、不意に聞こえてきた声に驚かされる。]
ぶっ。あはははは。
[ジムゾンの失態に遠慮なく大笑いしたら、気が緩んだのか、今まで押し殺していた感情が、苦い後悔が口から漏れる。]
……昨日外に出るレジーナさんを見つけて、無理矢理引き止めていたら、こんなことにはならんかっただろうな。*