[――3年前、農場を知人に任せ、恋人と連れ立って旅に出ていたヤコブは、なぜか一人で戻ってきた。
肩に大きな傷を負い、瀕死の状態で倒れているのを村人に発見され、どうにか一命を取り留めた。
身体が回復した後も多くを語ろうとはしなかったため、彼に何があったのか知るものはいない。
友人たちも、無理に聞き出すことはなかった。
ゲルトをはじめ、友人たちの見舞いの甲斐あってか、抜け殻のようだったヤコブにも徐々に表情が戻ったが、その笑顔にはいつも、どこか哀愁が漂っていて、村人たちとも少し距離を置くようになっていた。]**