草原の猛禽が翼を広げるには、今が好機だろう。
両前線指揮官の戦死に事態は混乱し、
何より、両国内の開戦派の勢力と、和平派の勢力が拮抗しているうちに。
逆に言えば――時を待てば待つほど、和平派の力は強くなるばかりだ。
戦局は戦術的勝利を目指す方向に舵を切っている。
………、…ああ。
港湾調査の結果、戦艦の製造も、少しずつ進んでいるようだ。
今すぐ動かす事は両国とも不可能だろうが、
戦争が終結したあとに完成すれば、諸外国への備えも出来上がる事になる。
益々、海路を塞がれているうちに動くほうがいい。
[鎖の国の目的は、正確には侵略ではない。
…好機と見せかけた情報を流し、鷲の国を大陸にけしかける事、だ。
それにはどれだけの迅速を以っても時間がかかる。
終戦には間に合わないかもしれないが、今動かねば、機会は失われるだろう]