まさか。そんな殊勝な心がけをするような人には見えないわ。
[かくっと糸の切れた人形のようにうつむく。
そして、くくく、あはははと、どこか狂った笑い声をあげる]
本当に傑作よね。滑稽すぎるわ。
でも祖国が何?
兄さんを殺した事実が……我が家が壊れた事実が変わるわけではないわ。
どうせ、居場所なんてどこにもなかったのよ。
ちょうどいいだけよ。
でもね……。
[言葉を切ると、ベリアンに近づき、胸ぐらをつかむと、引き寄せ間近で見つめる]
よけいあなたには死んでほしくないわ。
生きて、生きて、ぼろ雑巾のように生きて、死んだ方がましだと思えるほどに生きればいいわ。
死んで楽にさせるなんて、絶対させない。