― バルコニー ―[意識が逸れたのは一瞬。だが防御が甘くなるには十分だった。完全には受け損ねたスティレットが深々と右腕に突き立つ。肉どころか骨も抉られる嫌な感触に、眉をひそめた。] ……。[無言のまま、微かな怒りを漂わせて左腕を戻す。剣を投げた剣士が既に撤退していたは幸いだった。赤黒い茨の蔓が城主の体に巻き付いたあと、周囲を弾き飛ばす勢いで爆発的に広がる。]