― 回想 ―
[種族の壁も、鬼族とそれ以外の壁も、まるで感じていないかのように、ミリアムはこちらへ話し掛けてくる>>60。
少女が深く安堵した理由は、傷が癒えたことだけではなかっただろう]
そうだったのか。
"外"の人間でも、そんなことがあるんだね。
[ミリアム>>61の話を聞いて、少女は瞬いた。
島の外の人間がどのように暮らしているのか、少女はあまりよく知らない。
けれど、将来のことを訊かれて息を詰めたのは、それが理由ではなかった]
アタシは……『柱』になるんだ。多分、二十歳を迎えるより早く。
だから、将来とかは……考えたことが、ないな。
[それは、生まれた時から決まっていたことだ。
それに、『柱』が『柱』である以外に何者であるのかを、少女は知らなかった]