[ 水飛沫と一緒に、宙に跳ね上がったバナナの皮は、花神が、錫杖を引っ掛けるように一閃させると同時、ばらりと、一センチ角程の細切れ状態となって水面に落ちた ]
この程度の大きさなら、魚のエサか蓮の滋養にはなろうさ。
[ 皮を細切れに引き裂いたのは、錫杖そのものではなく、錫杖によって操られた水の刃だ。しかしその差がハルトの目に留まったかは判らない ]
ハルト、逃げるはいいが、もう後がないぞ?
[ 清らかに満々と澄んだ水を湛えた蓮池の縁、愉しげに問う、花神の声に応じるように、ゆらりと水面に伸びた蓮花の茎が一斉に揺れた* ]