― 相談を持ちかける直前 ―
[腕を這う蔦は雫が落ちた数だけ伸び、傷口よりも心臓に近い位置で輪を描く。
まるで意思を持っているような動きも当たり前のように受け入れ、静かに笑んでいた。]
森に住んでいた頃は、人間から教会の黒い噂を聞くことがありましたが、随分と身体を弄ばれているんですねぇ。
正直舐めていました。
[腕を伝う雫は次第に少なくなり、袖の赤を残して、涙を止めてしまう。
決して早くはないが、通常の人間よりも優れた自己治癒能力が深い切り傷を塞ぎ始めていた。]
貴方、お兄さん、戦士さん。
私と交渉しませんか。
[そう声をかけたのは気まぐれが半分、彼の力を見とめたのが半分といったところである。
己が意志のためならば、何を犠牲にしようと構わない。
唇から滑らかな言葉>>81が零れ、笑みを深めた。]