[手元にある「分析の経過を纏めたファイル」には見覚えがあって、それはちょうど異邦人を見つけた日の所で終わっていた。
肩に残る凝りもあの日のままだ。
”いけない、このままでは。”
慌てて席を立った。
ファイル保管室で慌しく本を戻すマーティンを無視して廊下を、地下書庫への階段を驚くべき速さで駆け下り、ローレルの元へと急ぐ。
――たどり着いた先のローレルには、何事も無かったようで、息を切らす自分を見つけて不思議そうな、心配そうな面持ちをしていた。
ほんの少しバツの悪い悪い顔をした僕は、何でもないと誤魔化してその場をやり過ごす。
そうして、何日も、何日経っても、バグ騒動は起こらなかった。
シメオンとリュカなんて人物は元々図書館に存在しなかった。それを除いては、以前と変わった様子は何もないようだった。]