酒はもうおしまい。
蜂蜜入りのお茶でも飲みなさい。
それとも林檎を剥いたげましょうか。
[酔っぱらった彼の世話をやく合間にいろいろと話を聞いた。
いわく、幼い頃はよく女の子に間違えられたとか、無茶して医者の子に叱られるとか、実はそれが目当てだったりするとか、サクランボの柄を舌で結ぶことができるとか、火は嫌いだとか、徒然なるままに、うっかり彼の人となりを熟知してしまった。
おそらく当人は何をしゃべったかなんて覚えていないだろう。どんなに儚い目をしていたかも。
手紙を盗み読むのとはまた違った秘密の預かり方に、距離を誤る自分の心をどうしようかとまどう。]