― グランツェルツ橋 ―
[解放した術は流れに沿って駆け、複数の船をその刃にかける。
追って放たれた火箭が赤い焔の花弁を散らすのを見つつ、浮遊の術を解いて、橋へと降り立った]
……っつ……。
[直後に感じたのは、軽い眩暈。
それでも踏み止まれたのは、合流した魔術師部隊の者が声をかけてきたから]
ああ……大丈夫、だ。
……戦線離脱した連中は、無理に追う必要はねぇ……深追いして、余計なモン釣り上げたらこっちが不利だ。
あと、飛び込んだ敵兵は、拾えるだけ拾っとけ。
……触媒に使えるヤツがいるかも知れねぇ。
[その『飛び込んだ連中』の中にベネディクトがいた>>80のは見えていたが、そこには触れずに指示を出し。
は、と一つ息を吐いて、紅の舞い散る川面を見やる。
僅か、細めた瞳に感情のいろはないものの。
肩の真白は落ち着きなくその尾を揺らしていた。*]