[気づいたときにはもう、その上質な服に袖を通していた。知らない名前を探す声がする。自らが何をしようとしているか、それがどんなことを意味するか。少年には痛いほどわかっていた。けれど、もう遅い。もう後戻りなどできない。]『――――ここだよ。』[そして少年は自らを捨てた。名もなき捨て子は死に、][――――彼は、“リヒャルト・ラインハルト”となった。]