― 闇桜の事始め ―[──それは、幾度前かを数える事も最早叶わぬ遠き刻の事][今の世にて『闇桜の領域』と称されるそこは、『銀の桜鬼』と呼ばれる鬼神の領域であった。領域には、異界より鬼神が連れ攫いし娘が囲われていた。如月の君、と呼ばれるその娘は自らも鬼神を愛し、その眷属たる桜木を等しく慈しんだ。鬼神の眷属たる桜木には、ひとつひとつに名が与えられ、その力に従う事が定められていたが。とある若木が、その理から外れる事となった]