[暫くの間、周囲では入れ替わり立ちかわり人の動きがあっただろうか。
彼らが語る言葉を聴き、悲鳴を聞き、けれど言葉は発さずに、
暫くは無残な躯を見下ろしていたが、やがて、ローゼンハイムの躯に近寄ると腰をかがめ、傷口を間近に眼を凝らす。]
傷口が、刃物じゃあない。
……まるで『獣』だ。
[立って、物言わぬ躯を検分する。
眼を背けたくなるような傷にも怖気ず触れ、
死後の状態を概ね眼と頭に焼き付けておいた。
医者でも検視官でもない素人、自らの経験に則って憶測を引き出すしかないが、隔離されたこの場では致し方ない。
玄人と違い多少手荒であっても、人の好いローゼンハイムは文句を言わんだろうとの頭もあった。尤も、もう文句を言える口は持たないのだが。
アルビンがシーツを掛けてくれようとすれば>>66
それを黙って見詰め、家主の身体が白い布に包まれるのを
そしてまた、彼に向け捧げられる祈りを見詰めた。]