ついでにこれ。
[ごそごそと胸ポケットのあたりを探ると、やはりお使いの調子で少し皺になった手紙をぽいと寄越す。
その中身は短い挨拶に続き現在の状況、ついでストンプの工作船を出して欲しいことなどが書かれている。
戦闘が激しくなればストンプ港までの往復時間はいかにも惜しく、損傷軽微な艦を修理・整備する工作艦の需要も高まってくるはずだった。
ストンプの持つ技術力は、高い。ウルケル随一と言っていいだろう。
それを発展させ推し進めたのは、前ストンプ侯、つまりウェルシュ・ストンプの父である。>>29]
ウェルシュに届けてくれ。
こいつと、えーっと……ああ、荷物もひとつ。
[あとで届けさせると口で言い、実際に届けさせるつもりでいるのは小さな麻の小袋ひとつだ。
中にはぶどうが入っている。
いいというのに、庭で採れたからと屋敷守の老婆に押し付けられた果実を、丁度いいとばかりに手土産にさせる魂胆だった。]