[つい先ほどまでの一時が嘘であるかのように、男は淡々と事務的な口調で評議会の決定事項>>1を語り始めた。
それを気怠げに聞き流し、ひとつ伸びをする。
言葉が途切れたところで、重ねた手の上に顎を乗せて]
……でもそれは理由の半分にしかなっていない。
何故君は、「僕に」行かせたいの。
[――そう、彼が素直に評議会の召集に応じるなど、誰も思いはしないだろう。
末席に連なるものの、議会に殆ど顔を出さず、まともに議員の責を果たしたことなど無い。
重ねた齢だけなら、血統の長となっても良い歳ではあっても、尊崇や畏敬には程遠いところにいた。
彼には常に不名誉な噂と蔑称が付いて回った。
曰く、誇りなき浮き草、人間にさえ媚を売る淫売。
曰く、相手も選ばぬ悪食、同族さえ食らう大喰らい、と。]