― 鐘の塔 ―[ 街へ、王宮へ 重々しい鐘の音が響き渡る。 塔の上からは見えていた。 王宮に連なる道の上に 徐々に人の顔が増え始め、 鐘の塔を見上げる様子が。 急ぎ、逃げてしまえばよかったのだろうか。 否《いや》、それは叶わないと解っていた。 人の駆ける速さは音を超えない。 ともすれば、不安を顔に浮かべた民の目から ――… あるいは王宮から成る道を、 駆けてくる兵の目>>79からは逃れ得ない。 ]