[それはまだサロン内に居た時のことだったか。
医務室へ行くことを提案し、向かおうとした矢先。
ダーフィトは自分に向けられた視線>>32に気が付いた。
じろじろと不躾に此方を見る男の口から、
自分のファミリーネームが呟かれ、双眼を眇める。
名前を示す徽章は椅子に掛けられた上着に付けたままだった
サシャに関わる騒動の最中に見たのだろうか。
どういう経緯にしろ、自分へ向けられた目は
あまり気持ちよく感じる類のものではないように見えた。]
[しかし。ダーフィトが男へ向けた視線も、
きっと褒められる類のものではなかっただろう。
本人から弁明を欲することもなく、
騒動の最中に唐突に現れてエレオと何やら話していた男。
彼へ向ける視線には否応もなく冷たさが混じっていたのだから。*]