うん、私がオーベルニュ家の当主だ。
在学中は代理を立てて、殆ど連絡も取らずにいたのだけれど。
卒業しても誰にも言わずに戻るという約束だったから、ごめん。
こうやって国に戻ってくれば、同国の卒業生には分かるものなのにね。
[いつになく目を丸くした友人の顔は、珍しく思えた。
クスクスと笑いながら机を回ってヴィンセントの前まで進む。
同じ高さにある紫の瞳を、楽しげに光る薄茶色で覗き込んだ]
髪は色を抜いていた、が正解かな。
成人前に当主を継いだことで一部には有名だったから、色々と細工をした上で送られてね。
おかげで随分と傷んでもしまったけれど。
[当時よりも伸びて一纏めに括っている、在学中より艶のない髪に触れながら教える。
これもまた、ステファンにすら教えて来れなかった話。
約束などには目を瞑って教えてきてしまえば良かったかと、幾夜後悔してきただろう]