[角笛によって変化する王国軍の動き。
音一つで操る錬度の高さには舌を巻くより他無い。
今も短い角笛の一つで王国軍の陣がじわじわと動きを変えていた]
あれは……
歩兵隊は戦線を維持、無理に踏み込むな。
左に注意を払え。
弓兵隊、敵歩兵隊が距離を取ったところに斉射を繰り返せ。
騎兵隊、歩兵隊と弓兵隊の援護を。
[前線にそう指示を出すが、角笛ほど即効性はなく、伝達における時間の遅れがどうしても出る。
下がる敵歩兵に数歩、踏み込む者もいたが、指示が行き渡れば歩兵隊はそれ以上は押し込まずに南側回り込もうとしている敵兵に注意を向け始めた。
歩兵同士の接敵が解除された頃、後退し行く敵歩兵隊には天を目掛け射掛けた矢が数度降り注ぐ。
ナネッテの歩兵隊の後ろで待機していた騎兵隊を、弓兵隊の背後を迂回させる形で南側へ回そうとした。
どの指示も人を介してのものとなるため、数拍遅れての反映となる]