─ スラム街・路地 ─
[建物の陰に移動したのは、潜む為、ではない。
視線の主が追いかけてきたならその姿を視認出来るだろうという思惑もあるが、一番は身動きを取りやすくする為だ。
宅配の品を運んできた大きな鞄の中は、今は受け取り伝票と注文票しか入っていない。
だが、これを持ったまま咄嗟の行動は流石に取り辛いから]
手を空けたい時にも困らない様に、って勧められたのを買っておいて良かったわ。
[一旦鞄の中身を出すと、何重かに折りたたみ裏返す。
出てきたベルトと四隅を伸ばし、ウエストポーチに変形させた鞄に中身を戻して腰に取り付け。
次いで、ふくらはぎに手を伸ばすと留め具を外し、フックに鎖の中間を引っかけ直す。
これで何が起きても咄嗟に反応できそうだと顔を上げると、小さな猫らしき生き物は目に入るだろうか。
入らずとも、>>74変わらず離れる気配の無い視線に眉を顰めたまま建物の陰に沿って路地を進んでいった**]