>>77アデル
『年の離れた夫からの差し入れ、ビスケットを手にアデルは回想する。
彼女には姿形を同じくし、魂を分け合った双子の兄が居る。
幼い折には1枚のビスケットを仲良く半分ずつ食べたものだった。
いつだって、2人は「半分こ」で「同じ」だった、今までは。
先日の事件を経て。
兄は、エディは、「アデルと半分こ」と歌わなくなった。
彼女もまた最愛の人を得て、「エディと半分こ」ではなくなった。
いつまでも変わらず、2人きりで居る事が幸せだったのか。
しかし、1枚のビスケットを真剣な顔で折り分けているエディに、アデルは笑みを零す。
エディは手に在る幸せを、法廷に居る全ての人と分かち合おうとする。
ならば、足りない分は自分が補ってやれば良い。
エディの幸せが、アデルの幸せなのだから。
アデルは、ビスケットをそっとエディの皿に置き、満足気に頷いた。』