[まだ見ぬ温泉へと思いをはせれば、彼>>62がどうしてドロシーに花の湯が似あうと思っているかなど、しりもせず。
"似あう"という言葉には、そうかしら、なんて。にこにこ無邪気にほほえむだけ。
せかしてみれば、思ったとおり。
焦ったふうに声をあらげる従者に、ドロシーははしゃいだ声をあげました。
他の人にたいしてはひどく冷たい表情をする彼が、ドロシーに対してだけこうやって、表情を豊かにするんですもの。
相手がたとえただの玩具であったとしても、"特別扱い"というのは、うれしいものです]
――ああ、ごめんなさい。
[ドロシーを抱え直したひょうしに、彼が陽の光をあびてしまったことに気づいたのなら。
ごく自然に、軽い調子で謝罪を落としました。
正直なところ、あまりわるいとは思っていませんが。
いちおうはドロシーのせいですから、謝るのは当然のことです。
そうして、目的地へと彼が歩きだすすこし前。
隣にいた女性>>69がこちらへと目礼したことに気づけば、此方からも。
ほんの軽く、頭を下げておきましょうか]