[そうして席を変える事なく、通路側のシートに姿勢正しく座る。
流れる景色を見る仕種で、視線は当然の様に隣席の少女を向いてしまう。やがて見えた富士山に声を上げる亜梨沙>>41につられ、玲緒は視線を外へと向けた。
薄い雪化粧を纏う山頂と、それを覆う空の青。それはどこか現実を忘れさせてくれるみたいで、思わず呟きがこぼれてしまう]
きれい……。
[退魔の力とは無縁の退魔師の娘である母と、ただ視えるだけの力を持った入婿である父。
そんな両親の間に生まれた玲緒は、祖父にとっては待望の後継者たる力を授かって生まれた子供だった。
そのせいか、外での修練よりも内での修練を課せられ、霊峰である富士にすら玲緒は訪れた事がなかった。
新幹線に乗る機会がなかったのも、その為である]