[家の中は、しんとしていた。ペーターは家を、奥へ奥へと進む。
この家に遊びに来たことは何度かあった。
例えばヨアヒムや、オットーと一緒に。パンを持って。
パメラの淹れたお茶を飲みながら、三人でご飯を食べた。
そのダイニングを横切って。
ヨアヒムに頼まれて使いとして来たとき、クララが家に居たこともあった。
彼女はペーターの姿を見つけると、ただ柔らかく微笑んだ。
例えば多くの大人が「子ども」にするように、「お使い?偉いわね」なんて言わずに。
ただ、一人の人間として、みてくれた
彼女とすれ違った廊下を通り過ぎて。
帰り際、魚を届けにきたディーターに出会ったことだって一度や二度ではない。
そのままパメラに誘われ、ディーターに頭を撫でられ、夕飯の席を囲ったことさえあった。
そういう、思い出を踏み抜いて。]