[少年は慣れた様で追っ手を撒くと、得意げに鼻を鳴らす。][決して豊かとはいえない街の隅。実の親を知らぬ少年は、拾い親の元で“働いて”いた。物心ついたときから変わらぬ生活。何の疑問も持たずにそれを繰り返す少年。十分な食料と安全な住処。そして自由。受容と供給ははっきりと一致していた。それだけで十分なはずだった。][転がり込んできたのは、果たして幸いだったのか災いだったのか。]